「バッタになりたい魔法使い」
魔法使いくんは、いつもひとりぼっち。しょんぼり歩いていた魔法使いくんは、仲良ししている二匹の羊に出会いました。
「仲良しは、バッタになっちゃえ・・・!」
魔法使いくんが魔法を使うと、二匹はバッタになってしまいました。でも、バッタになった二匹は仲良く草むらを跳ねて行き、いつか魔法が解けて、また仲良ししていました。
魔法使いくんは、再びしょんぼり歩きだしました。すると、今度は仲良ししている二羽のあひるに出会いました。
「仲良しは、バッタになっちゃえ・・・!」
魔法使いくんが魔法を使うと、二羽はバッタになってしまいました。でも、バッタになった二羽は仲良く草むらを跳ねて行き、いつか魔法が解けて、また仲良ししていました。
どうしてみんな仲良しになれるんだろう・・・。悩んでいる魔法使いくんを見て、お空のお月さまが言いました。「魔法使いくんは好きな子はいないの?その子のために何かしてあげたいことはないのかい?」魔法使いくんは今まで考えたこともなかった質問に、こう答えました。「ぼくは何もできなくて、誰にも、何もしてあげられないんです」お月様は言いました。「誰かを想う気持ちを力に変えて。そうしたらその子は魔法使いくんのことをみてくれるよ」
「こんばんは」振り返ると、お家に帰る途中のりぼんちゃんがいました。
魔法使いくんはどうしていいか分からなくなり、りぼんちゃんの顔を見ながら泣いてしまいそうになりました。「ぼくは何もしてあげられないんだ」
こぼれる涙と一緒にあふれでた魔法使いくんの魔法が、りぼんちゃんの手にかかりました。すると、りぼんちゃんの手に一輪のお花がのりました。「ありがとう」りぼんちゃんは嬉しそうに言いました。
二人は魔法の光につつまれて、バッタになりました。バッタになった二人は、仲良く飛び跳ねて行きました。お月さまのかけた魔法はいつもより長く解けませんでした。お月さまはそれを見ながら、空で今日もひとり微笑んでいます。
Web絵本「バッタになりたい魔法使い」 - おはなし・ひろましゃ、え・コモモ